「学校薬剤師って何をするの?」「薬剤師が学校に行くの?」
そう思った方も多いかもしれません。実は、地域の子どもたちの健康や学習環境を守る大切な仕事なんです。
今回は、現役薬剤師の私が3年間、学校薬剤師として実際に経験してきたことをまとめました。
業務内容や報酬、薬物乱用防止教室のリアルなど、あまり知られていない“現場の声”をお届けします。
最後には【しげナガ先生のひとこと処方箋】付き。これから目指す人にも、少しでも参考になればうれしいです🕊️
学校薬剤師とは?どんな制度なの?
学校薬剤師とは、「学校保健安全法」に基づき、各学校に配置される地域の薬剤師のこと。
医師・歯科医師と並ぶ「学校三師」のひとりとして、学校環境の衛生や安全を守る役割を担います。
勤務は非常勤で、地域の薬剤師会を通じて市町村の教育委員会から委嘱されるケースが一般的です。
特別な資格は不要で、薬局勤務・病院勤務など職場を問わず応募できます。
❗学校は“選べない”ことが多い
担当する学校は、薬剤師会の調整によって割り当てられるのが基本です。
「◯◯小学校がいい」といった希望を出すことは可能ですが、必ずしも通るとは限りません。
配置バランスや担当者の有無などにより、希望とは異なる学校に決まる場合もあります。
与えられた環境で信頼関係を築く姿勢が大切になります。
実際の業務内容|私が担当していた仕事
私が担当していたのは、公立小学校1校。業務は主に次のとおりです。
■ 環境衛生検査(年2回)
- 教室や図書室の照度測定
- 教室や理科室の換気(二酸化炭素濃度)
- 音楽室・技術室などの騒音チェック
- 給湯室・理科室などの一酸化炭素
- 飲料水の残留塩素測定
- プール水質検査(夏季のみ)
検査時間は1回につき1〜3時間ほど。
検査内容によっては2日連続で来校することもありました。
検査後は養護教諭とのやり取りを通じて報告書を作成し、設備の改善点などを助言します。
※校長先生と直接話すことは基本的にありません。
年間を通じての来校回数は10回未満。突発的な呼び出しもなく、スケジュール管理がしやすいのも特徴です。
報酬はどのくらい?年間20万円でした
学校薬剤師の報酬は自治体によって異なりますが、
私の場合は市町村の教育委員会から、年2回(上期・下期)に分けて支給されていました。
担当は1校で、年間報酬は20万円。
実働時間や内容を考慮すると、時給換算ではまずまずという印象です。
報酬の概要(私の場合)
- 年間報酬:約20万円
- 支払い元:市町村教育委員会
- 支払時期:年2回(上期・下期)
- 実働:1回1〜3時間、年間10回未満
副業としても無理がなく、育休中・時短勤務中でも続けやすい働き方だと感じました。
薬物乱用防止教室の講演は“任意”でも意義あり
よく聞かれるのが「薬物乱用防止教室ってやるの?」という質問ですが、
これは必須の業務ではなく“任意”の取り組みです。
私は養護教諭から依頼を受けてスタートし、その後は「やってみたい」と自ら希望して、
紹介を通じて計3校で講演を行いました。
なお、講演をしてもしなくても学校薬剤師としての報酬は変わりません。
ただし、講師料として別途謝金が支払われる場合もあり、私も実際に何度かいただきました。
■ 講演内容と工夫ポイント
- 対象:中学生+保護者+教職員(1回200〜500人規模)
- 時間:約40分
- 内容:
- 薬と毒の違い、市販薬の誤用
- ネット購入のリスク
- SNSで流行する「大麻グミ」などの最新情報
- “断る”勇気の大切さ(ロールプレイ含む)
事前に学校側から「この話題に触れてほしい」とリクエストが来ることも多く、
毎回スライド内容や話すトーンを調整しました。
生徒の反応はさまざまで、「怖かったけど知れてよかった」「家族に話してみようと思った」など、
現場だからこそ得られる実感とやりがいがありました。
学校薬剤師をやって感じた3つの魅力
① 地域の子どもたちを支える実感
間接的ながらも教育現場の安心・安全に貢献できるやりがいがあります。
② 薬局では得られない経験が詰まっている
報告書作成・講演・教育現場との連携など、薬剤師としての幅を広げる経験になります。
③ 自分の生活スタイルに合わせやすい
年数回の訪問が中心で、他の仕事や家庭との両立も◎。
副業やキャリアブレイク中の人にも向いています。
興味がある方へ|まずは薬剤師会に問い合わせを
学校薬剤師は、薬剤師会を通じて委嘱されるケースが多いため、
まずは地元の薬剤師会に「学校薬剤師に興味があります」と相談するのが第一歩です。
講演に関しても、「希望があれば紹介してもらえる」ことがあるので、
受け身にならず、やってみたいと伝えることがチャンスにつながるかもしれません。
🧾しげナガ先生のひとこと処方箋
処方名:地域と子どもを守る薬剤師の一歩
用法・用量:知識+行動+共感力をセットで。副作用は“やりがい”とちょっとした講師謝金。
備考:薬局の外でも、あなたの経験が社会を支える力になります。まずは一歩、踏み出してみて。
🔮次回予告(関連記事もどうぞ)
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